一人娘と大成功

太平洋の見える総ガラス張りのカフェレストラン。斜めはるか下に、波打ち際を走る高速道路のヘッドライトが、美しい曲線を二本、三本えがいて流れている。

オーダーを取りに来た18歳くらいに見える少女に、

「熱燗の日本酒二人娘と、パッタイとここのオリジナルのサラダをおねがい」

「はい」と明るく、答え、見事に少女は、私のオーダーを「熱燗の二人娘と、パッタイにー」リフィレンして軽やかな足取りで厨房に向かう。

私は、クスッと笑った。枝美佳が怖い顔で、私を睨む。

ほどなくして、少女が銀盆にオーダーのお酒の徳利とチョコをのせてきて、「お待たせしました」と、細いサヨリのような指で、徳利をおく。

「シェフに怒られなかった?」と聞く。と、いきなり、無邪気に笑いながら「オーダーするときに、メモを読みながら、気がついたんです。

二人娘っていう銘酒はないことに、それで、慌てて、一人娘ってオーダーしました。自分でもおかしかったので、オーダーしながら、笑っちゃいました」

「ごめんなさいね。主人の悪いクセなの」ヤマのカミに怒られました。

この少女に、えらく感動している自分に驚く。
キラキラ光る四方のガラスに、まるで映るかのように、ドイツの哲学者で神秘家のルドルフ・シュタイナーと現代の大富豪であるロバート・キヨサキやドナルド・トランプが浮かんでくる。
日本人では、最近亡くなった船井幸雄さんなの顔と言葉などが交錯して、迫ってくる。それを書かねばならない、と言う衝動にかられる。人生の成功と関係するからだろう。

           少女に啓発されている むらっち。


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