運と人の情け

ハッとして、今回こそはダメか、とあきらめて、落胆の淵に落ち込むことは、誰にも、あるのでしょうか?  
うん、あるに違いない
し、いや、あるだろうなぁ。  

あの、ノーベル賞を受賞されたあの科学者たちにも、あるに違いない。じじつ、ノーベル平和賞の少女マララさんは、九死に一生を得たではないか。
「銃より一冊の本を」と訴える彼女は、神様から使わされた平和の使者かも知れません。テロリストとテロリストを生む社会へのー。   

そんな高尚な話ではなくて、ワリイけれど

今回も、ハッとしておのれの悪運を呪ってしまった。東北の地方都市。「ナンとか牛」がウマイと言う焼肉屋さんに、カミさまと入った。三回目である。いつもの席に座る。
テレビにでも出てきそうなカワイコちゃんが注文をとりにくる。
「今日は、社長は、おやすみなの?」と、別に用もないのに聞く 「会長のことですか?会長なら、もう少ししたら、来ます」    
返事なんかどっちでもいいので、私は、うなづき、愛そうのない娘だな、とカミさまに言う。「緊張しているだけよ」とたしなめられてしまった。

料理はうまかった。赤ワインのボトルは、三分の二を残し、それを手にカミさまの運転する車に、ご機嫌で乗り込んだ。すると、カミさまいわく
「そのボトル、いつものおじさんに渡さないでよ。ホテルの部屋で自分で飲むのよ。外に出るたびに赤ワイン飲むんだから」

いつものおじさんとは、駐車場の誘導するおじさんのことだ。いつか、一杯だけ飲んだボトルを、残り物で悪いけどと、ぽんとプレゼントして以来、たまに、ブレゼントしていたからだ。なにも差し上げないと、後ろめたくなる。何かないかと聞くと、リンゴがあるというので、今回は「お孫さんに!」とリンゴを手に乗せたのだ。

ご機嫌でホテルの部屋でくつろいだ瞬間、地獄に落ちた。ショルダーバッグがない。携帯がない。考える。東京から、今回、サービスエリアに立ち寄ったのは、どこだ。

あのバッグには返済用のお金が三百万余円入っていて、カード類がたっぷりある。青くなる。いや、鏡をみてないから、青くなったかは不明❗ 「たいへんだよ、ショルダーバッグがない、どこかに置き忘れた」「そうなの? 家に置いてきたんじゃないの? もう 歳だからね。いつまでも若いつもりじゃいけないってことよ」
「ムムム!」
うるせぇ!焼肉屋に電話しろや、うちらの席には、なかったよ、と押し問答。それでも電話をしたカミサマが、「おおきに、ありましたか、いまから、お伺いします」

焼肉屋の入口で、あの美少女のカワイコちゃんが、くりくりした目で、「すぐ、追っかけたんですが、あのクリニックのかどまで。でも間に合いませんでした」
深く頭をさげて、ただ、感謝するしかなかった。愛そうがないのではなく、真面目で、誠実な情けが、押し寄せてくるのでした。

ここへ来て三回目の忘れ物騒動である。二ヶ月前は、携帯やら小道具をホテルから遠い温泉宿に忘れ、保管してもらった。初回はblogに書いた小銭入れの忘れ物でした。

いつかは、那須のファミレスに、整理のために持ってあるいていた全銀行印と全銀行通帳の一切合切を忘れて、しかも、それに気付かず、3日後に、所用で東大の構内にいたときに、呼び出しを受けてようやく、忘れていたことに気付いた。なんと、連絡は、ある銀行からで、ファミレス経由のご連絡と確認でありました。
  知った後で、二人とも、脂汗がながれて、五キログラムもダイエットができました。東京から那須のファミレスに車を二時間、直行でぶっ飛ばしたのは、ヤマノカミさまでしたがー。

それにしても、忘れた物がどれも戻ってきたことは、なんと言う幸運なことか。なんと言う善良な人々なことかと、心底思います。

それで、昨日今日と、エレベーターでも、必ず、オジンでもオバンでも、偉そうなやつでも、丁寧に会釈して、「お先にどうぞ」とゆずり、とても優しい気持ちになっているのです。不思議です。

                                                     気分いい むらっち


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